キャンドルナイト裏側取材(1) “存在を知ってもらって優しい街へ”吉村映里さん&琉希くん

今年で9回目を迎えるNPO法人わっかの主催イベント「やちよのキャンドルナイト」。市内の団体や幼稚園・学校の子供たちに紙袋に絵を描いてもらい、当日はその中にキャンドルを入れて灯します。

重度重複障害を持つ吉村琉希くんと母の映里さんも、長年キャンドルナイトの運営に関わっています。今年はオンライン配信用のアイテム=絵を描いてくださった団体さんを紹介する紙芝居を制作しました。関わるようになったきっかけや、”琉希くんを楽しませるのが趣味”という映里さんの日々について伺います。
※特に記載のない写真はイメージです。

工夫してものづくりする経験を活かして

-キャンドルナイトにはどんな関わり方をされているんですか。

コロナ渦の前はお手伝いに来てくれた学生さんのサポートをしたりしていました。容器に水を入れて、キャンドルを浮かべて灯すんですが、寒いし大変な作業なんですよ(笑) もう何度も来てくれている学生さんもいるので、勝手がわかっているのはとても助かりました。

キャンドルナイト準備風景。(写真は2020年)


当日のお手伝いだと息子の体調などもあり参加できないかもしれないので、最近は小道具作りをしています。去年は受付後にはめる蓄光ビーズのブレスレットを400本作りました。

-400本!! ハンドメイドが得意なんですね。

得意なのかな(笑)琉希を育てていると、市販品では足りないものがあるんです。この子に合うようになんでも工夫してものづくりしているので、それを応用して何かできることはないかなと。

-工夫してですか。

たとえば琉希の手を置いているクッション。市販のものもあるんですが、筋緊張(体のこわばり)が強く反りかえってしまうんですね。脳性麻痺があるので体がうまく使えないし、そうすると市販のクッションでは手が落ちてしまうんです。だから、こうやってガードを付けてます。

-そうなんですね! 確かに、ガードがクッションと一体化して手が落ちにくい構造になっていますね。富士山柄も素敵。

たくさんの人と知り会えた、知ってくれた

-キャンドルナイトに関わるようになったきっかけは。

もともとは、息子が学校を卒業した後に通う生活介護施設の選択肢が多くなく、同様に悩んでいる人が他にもいたので、知ってもらう活動をしていました。そこでわっかに出会ったんですね。イベントで缶バッチやステッカーなどを物販したり、キャンドルナイトで紙袋に絵を描かせてもらいました。


今その活動は終了していますが、その時にたくさんの人と知り会えたんです。障害のある人がいて、家でずっと過ごしていると社会から見えない存在になってしまうけど、出かけると存在を知ってくれる。こういう生活をしている人がいるんだということを知ってもらえればと思って参加しています。

本人は何もできないし、しゃべれないし理解力もない。でも親子で一つとして私が体を貸して、息子は存在が活かされるような感じになるかなと。もともとお出かけやイベントも大好きなのもあります!

-障害を知ってほしい人、知られたくない人、いろんな方がいらっしゃると思いますが、映里さんはなぜ知って欲しいと思いますか?

たとえば車いすでお出かけしていて、段差で困っているとき。誰かがちょっとお手伝いしましょうかとか、声をかけてくれるのはすごく素敵なことだと思うんですよね。優しい出来事だと思う。少しでもそういうことが増えれば街全体が優しくなるのかなって。

息子が学生の頃、近くの小学校の子供達が特別支援学校に交流しに来てくれる時間があったんですね。来てくれた子たちは自分の目でこういう障害があるのを見ているので、目が覚えててくれていると思います。身内にそういう人がいないと実感しにくいし想像もできないんだけれど、少しでも関わる時間があると「あ、しゃべれないんだ」とか色々と想像できるようになってくる。

-「52間の縁側」の考え方と似ているかも

以前スーパーで自動ドアの前にいた時、中から来た小3くらいの子がドアを開けて押さえていてくれたことがあったんです。びっくりしてお礼を言ったんだけど、そういう子はどこかで目にしたり関わったことがあるのかなと思います。おばあちゃんおじいちゃんで体の不自由な人がいたりとか、経験して知っていたからそういう行動ができたのかなと。

中には子供は悪気なく「変な顔してる」とかいう言葉をかけられたりしますが、自分に関係のない”赤の他人”だから思いやりなく言ってしまうのかなあ、と感じたりします。

-自分と関わりのある世界で、ともに生きているんだと気づく経験は大切ですね。

外に”障害物”がいっぱいある

現実、家の外を出歩くということはハードルが高いです。”障害者”というより、外に”障害物”がいっぱいある。段差もそうだし、タクシーやバスも対応してくれていることはあるんだけれど、気軽に使える感じではないんですね。そうすると出かけるのは同じ場所になってしまったり。

歩道や道路を作り直すとか、お店を全部バリアフリーにするとかは現実的でないので、地道に少しずつ増えていけばいいなと。

-あとは人の工夫ですよね。

そう、車椅子の方も入りやすいお店にしようと思ってくださる人が少しでも増えてくれたら、と思うと、どこかで接点を持って私たちの現状を見てくれる場所にいかなきゃ、という思いでいる。この子が生きている間にどれだけバリアフリー化が進むか、それは全然かもしれませんが、一歩一歩地道に。

手作りの紙芝居枠。

-手作りの紙芝居枠は、ミニ紙袋とライトで飾られミニチュアのキャンドルナイトが再現されています。紙袋を書いてくださったみなさんをこの枠で紹介しますので、当日オンライン配信で出てくるのを楽しみにしていてくださいね。
※配信についての詳細はわっかfacebook等でお知らせします。

姉妹サイトironnaでは、琉希くんのケアグッズを試行錯誤して手作りしていく映里さんのお話や、YouTubeでの発信について伺っています。ぜひご覧ください!

An baton